1、 公益法人等に対して財産を寄付した場合の取扱い
個人が、土地、建物などの資産を法人へ贈与(寄付)した場合、これらの資産は寄付した時の価額(時価)で譲渡があったものとみなされて、これらの資産の取得した時から寄付した時までの値上がり益に対して所得税がかかります。例えば、個人が1000万円で購入した時価1億円の土地を法人に対して寄付しようとします。このときタダで寄付するのに、これに対して所得税がかかるとは通常は考えません。しかし、税金の計算上は、一度法人等に時価1億円で土地を売却して、その売却代金を法人に寄付したとみなされてしまいます。したがって、この時にかかる税金は、約1800万円{(1億円―1000万円)×20%}ということになります。(復興特別所得税は考慮していません。)
ただし、これらの資産を公益法人等(注1)に寄付した場合で、その寄付が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することなど一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認(注2)を受けたときは、この所得税について非課税とする制度が設けられています。
(注1) 公益法人等とは、公益社団法人、公益財団法人、特定一般法人(法人税法に掲げる一定の要件を満たす法人をいいます。)及びその他の公益を目的として事業を行う法人(例えば、社会福祉法人や学校法人など)をいいます。
(注2) 承認要件とは
国税庁長官の承認を受けるためには、次のすべての要件を満たす寄付であることが必要です。
【承認要件1】
寄付が教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること。
【承認要件2】
寄付財産が、その寄付日から2年以内に寄付を受けた法人の公益を目的とする事業の用に直接供されること。
【承認要件3】
寄付により寄付した人の所得税の負担を不当に減少させ、又は寄付した人の親族その他これらの人と特別の関係の人の相続税や贈与税の負担を不当に減少させる結果とならないこと。
2、 寄付後の取扱い
(1) 非課税承認の取り消し
非課税の承認を受けた場合でも、以下の(一)から(三)に該当する場合、国税庁長官は、その非課税の承認を取り消すことが出来るとされています。
(一) 寄付財産が、寄付のあった日から2年を経過する日までの間に公益法人等の公益目的事業の目的に直接供されなかった場合。
(二) 寄付した財産が公益法人等の公益目的事業の用に直接供されなくなった場合(注3)
(三) 寄付した人の所得税の負担を不当に減少させ、又は寄付した人の親族その他これらの人と特別の関係がある人の相続税や贈与税の負担を不当に減少させる結果(注4)となる場合などに該当したとき。
(注3) 寄付財産が公益法人等の公益目的事業の用に直接供されなくなった場合の例示
イ、 公益法人等が寄付財産を譲渡し、その譲渡代金の全額を事業費として消費した場合(一定の要件のもと譲渡した場合、その譲渡代金の全額をもって、譲渡した寄付財産と同種の資産(買換資産)を取得した場合に限り、その買換資産を寄付財産とみなして承認を継続します。)
ロ、 公益法人等が寄付財産(土地)を優良駐車場として使用した場合。
ハ、 公益法人等が寄付財産を職員のための宿舎や保養所などの福利厚生施設として使用した場合。
(注4) 所得税・相続税・贈与税の負担を不当に減少させる結果となる場合の例示
公益法人等が寄付した人又はその親族などに対して、次の行為をし、又は行為をすると認められる場合
イ、 公益法人等が、他の従業員に比べて正当な理由もなく過大な給料等を支払っている場合。
ロ、 公益法人等が所有する施設を私事のために利用させている場合。
ハ、 公益法人等が所有する財産を無償又は著しく低い価額の対価で譲渡した場合。
(2) 非課税承認の取り消しの場合にかかる税金
非課税の承認の取り消しがあった場合には、上記(1)の(一)から(三)に該当する区分ごとに、それぞれ以下の人に対して、原則として、非課税承認の取り消された日の属する年の所得として所得税が課税されます。
イ、(1)(一)に該当するとき
寄付した人に対し、所得税課税されます。
ロ、(1)(二)に該当するとき
公益法人等に対し、所得税課税されます。
ハ、(1)(三)に該当するとき
寄付財産が公益法人等の公益目的事業の用に直接供される前に該当するときは、
寄付した人に対し、また直接供された後に該当したときは公益法人等に対し、所
得税課税されます。
※ 非課税承認取り消し時の所得金額の計算
3、 承認の手続
国税庁長官の承認を受けようとする人は、寄付した人が、寄付日から4ヶ月以内に、寄付した人の所得税の納税地の所轄税務署長に、一定の承認申請書を提出しなければなりません。